今年、アラバキロックフェスに行った。
(タイトル詐欺じゃないです)
2019年に行った後、世界はコロナ禍に突入。ほぼすべてのイベントは中止にならざるをえない状況に。4年ぶりに行ったアラバキは懐かしくて本当に楽しみで、交通トラブルに巻き込まれたものの「やっぱり好きだ」と思えるイベントだった。なんであれ、一度目はもちろんだが二度目ってすごく重要で、わたしはまたこのみちのくに来るんやろうなって思える2日間だった。
今年のアラバキで、the LOW-ATUSのふたりが「アラバキは、大変だよね。もともと夏フェスがたくさんある中から逃げてきて、5月のまだ涼しい時期にすることにしたのにさ、結局この時期にもフェスの数増えちゃってね、、」みたいな、おおよそそういうようなことを笑いながら言っていたのを思い出す。それでもわたしにとって、春を過ぎてまだ夏にもならないこの時期に思い出すイベントと言えば、やはりアラバキなんだと思う。
お気に入りのイベントとか空間っていうのが、わたしたちのような人間にはいくつかあって、〝もうすぐ○○の時期だね〟とか〝チケットもう買った?〟とか、友人との会話の中でよく飛び交うことがある。音楽だけじゃない。映画とか、フリマとか、アートとか、ごはんとか。いいものが集まる場所はいい空間になって、価値が生まれる。
オンライン配信のあるイベントが増えた(増えざるをえなかった)昨今、その場に集まることの重要さや貴重さを実感する。遠くにいてもそこにいるようにイベントを楽しむことができるようになって、ありがたいことに、離れていても、わたしたちはうちで踊ることができた。それがいいと思っていたし、そういうふうに、メディアやコンテンツを準備する側も立ち回りをしていかなくちゃいけないと、いち業者のはしくれであるわたし自身も、3年前は思っていた。
でもきっと、大事なことは、元に戻ることなんだと思う、と、なんとなく気づいている。わたしたちは戻らなくちゃいけないと思うし、戻れる場所を準備するのが、カルチャーを守っていく我々の役割でもある。フジロックの配信が今年はないということに対していろんな声が上がったが、個人的にはそれで〝よかった〟と思った。
〝ここにしかない景色〟
というものを、求めている人がいる。
去年の10月。たゆたうというイベントに足を運んだ。
東京の奥多摩という場所で、廃校になった校舎で行われた。会場になったOKUTAMA+は「泊まれる・働ける・遊べる学校」とうたわれており、五感で満喫できる一日一組限定の貸切施設だ。サウナとかも体験できるし、BBQもできるし、撮影とかにも使える。これを聞いただけで、めちゃくちゃいい空間みが溢れているし、やっぱ、吉野とか、なんやろう、長野の山とか、そういう場所じゃないと体験できないのかなと思いがちだったが、意外と東京の外れにもあるんだなというのが最初の驚きだった。
では、〝OKUTAMA+〟ではなく、
〝たゆたう(in OKUTAMA+)〟にしかない景色というのはなんだろうなって考える。
わたしは映画が好きで、2年に一度東北で開催される映画祭によく足を運んでいた。そこで、けっこう知り合いと顔を合わせたりとかして、映画が終わった後に周りを見れば「え!○○さんも来てたんですね!」みたいなことがままある。それからまた別れて違う映画を観にいったかと思えば、夜に交流場みたいなところでお酒をいただいていたらまた会う、みたいな。そういうのがめちゃくちゃ好きで、やっぱり、普段生活している関西で会うのとか、東京で仕事のついでに会うのとかとは、また違っていて。この場所で会えるからこそ、この時間に、空間に、意味があって、力をもらえる。
そういうのと同じようなことを、たゆたうというイベントには感じたのだ。
わたしは、音楽が好きだ。
音楽が好きだけど、もっと好きなのは音楽を好きな人だし、音楽を好きな人が作る空間のことも最高に好きだ。
もちろんあのアーティスト出るから、とかっていうのはでかいけど、会いたい人に会える場所として、最高の空間だなって思ったし、ここだからこそ、生まれる何かがある。うまく言えているとは思えないが、そういうことなんだ。
先日のポッドキャストで谷口さんも言っていたかもしれないんだけど、音楽イベントとひとことだけでは説明できない(しない)理由のひとつが、音楽に限らず、○○さんが出店してるから行きたいっていうイベントもいいよね、みたいなことをたぶん言っていて、その言葉にめちゃくちゃうなずいた。ちなみにわたしはコーヒームテが爆裂に好きなので、去年に引き続き出店があると聞いて小躍りしながら喜んだ。アラバキで飲む一番搾りがめちゃくちゃうめえのと同じで、たゆたうで飲むムテさんのコーヒーがたまらなく好きだ。なので今年がもうすでに楽しみでいる。
季節の中で秋が一番好きだ。
その理由のひとつは、この季節に好きなイベントが増えたからだな、と。
そういうようなことを、七夕の夜に考える。
今日の夜ごはんはカレー。
去年のたゆたうでカレー作りのワークショップがあって、そこの出展者のカレーを作るキットを購入したのだけれど、それを機にわたしはGABANでスパイスを買いそろえた。自分を構築するものって、小さいころにある程度は決められているよなって思うことも多いけど、大人になった今だからこそこうやっていろんなイベントに足を運ぶ中で、わたしの生活は豊かになっていくなと感じる。
今年のたゆたうは10月28日。
長々と申し訳ないが、これだけは言いたいことがあって、今年の○○は、と、言えるのってホンマにすごいことやと思ってる。イベントが2年目を迎えることって難しいことやし〝続いている〟ということに変わりはない。その場所をつくりあげていくのって、主催はもちろんのこと、アーティストと出展者とスタッフと、そして、もちろん、お客さんである我々の役割です。
コロナを機にいろんなイベントが終わってしまったと思う。その度に、来年は行けたらって思ってたんだよなあと何度か思ったことがある。思ってしまった。好きなバンドがとつぜん解散したときにだって、いつかライブに行きたかったのになと思った。そして行かなかったことを、めちゃくちゃ後悔した。音楽が、カルチャーが、終わっていかないために、ひとりひとりの力は知れているかもしれないけど、わたし〝たち〟の役目は重要なんだと、信じたい。
カレーを食べていたらビールが飲みたくなって開けてしまった。
たゆたうが終わった帰りの電車のことを思い返す。
みんなも同じように電車に揺られて帰ったかな。また、みんなに会いたいなって、みんなも思っていたかな。そうだといいな。そんなみんなの帰る街のことをわたしは知らないが、同じ空間で聴いた音は、つぶになって、わたしの耳の奥でたゆたっている。
今でも。
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たゆたうクラファン終了まで、1週間。
https://www.muevo.jp/campaigns/3701