パンズ・ラビリンス

信じたものが、神様でいいよ。
信じたものが神様でいいなら
最後まで信じさせて。

神様なんていないなら、
祈りの作法なんて最初から教えないで。
魔法なんて使えないなら、
呪文の言葉なんてこの口から出てこないで。

 

人生はおとぎ話でいい。
だってわたしたちはずっと子どもなんだから。
自分のためだけの物語、自分を守る神話が、わたしたちにはなくちゃいけない。

あなたの子守唄はわたしの世界まで届くはず。わたしはずっとそこにいる。あなたがいつの日か夢見、いざなわれ、おののいたことのある、この世界に。
わたしの叫びは、聞こえないだろうが。
それでいい。
あなたはあなたの世界を生きていて。現実離れした物語や、なんの頼りにもならない神話など、あなたには似合わない。


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シェイプ・オブ・ウォーター観たときも思ったけど、そこにいる人をいないように扱っているさまをうまいこと見せるよねギレルモ。マイノリティーの反逆についても何かこだわりみたいなものを感じる。
存在を認識されないっていうのは死んでるのと似てる。大尉はもちろん、母親も大尉と息子のことで頭がいっぱいで、オフェリアのことも着飾り人形のように扱っている。だから大尉がオフェリアに銃を向ける瞬間、奇妙にもわたしの胸は高鳴ってしまう。やっと彼はオフェリアに目を向けたのだ!と。

オフェリアにとって唯一の善良な存在であるのがベンツ。あベンツっていうのはメルセデスのことですけど、彼女も過去に扉にいざなわれたことがあるように思う。けど踏みとどまった。何かがそうさせたのか、認められなかったのかは分からないが。

死後の世界は、あるのかもしれない。
それが、人に安らぎを与えることも。
でも死んだら何もかもおしまいだと思う。
だからベンツにはこの世界で生き抜いてほしいと思う。

【疑問点】
・パンは特別優しいわけでもないし見た目も怖いのに、抱きつきにいくほど少女が感情を向けているのが不思議。厳格で甘えることのできない義父への想いがパンに向いているのか?もしくはそれくらい追い詰められた状況で、自分を認知してくれるものならなんでもよかったのか?(パンは心象風景の一部なので本人を認知するのは当然。ベンツがパンのことを知っている矛盾について明記し忘れていたのでするが、かつての彼女も同じ経験をしたのだと思う。そしてそこで生きるか抜け出すかを選び、彼女は現実世界を選んだのでは?)
・第2の試練では綺麗なドリフのコントよろしく「志村うしろうしろ!」状態になるが、なぜあんなにお決まりの展開のようにブドウを食べてしまうのか。
・妖精の指示を無視して違う扉を開けた理由。
真ん中には何が入っていたのか。
上記の2点に関しては少女の何かへの反抗心、あるいは指示をされるだけだったり運命に抗えないまま死にゆく未来への反逆の精神なのかもしれない。
「疑わずにただ従うだけなんて、心のない人間がすることだ」みたいなことを医者も言っていたが、その言葉と、パンの「何も質問せずに言うことを聞け」という言葉はえらく正反対だった。
・大尉の持つ時計の意味。
彼自身にも彼だけに意味のあるおとぎ話があるような気がする。
・息子をレジスタンスであるベンツに素直に託したのはなぜか。
おそらく勝ち目のない最後、自分が生き残ることはあきらめて息子だけでも、と思ったのか。そこまでの父性が彼に生まれている理由がわからない。時計のくだりもあって、自身が父親との確執のようなものをかかえていることはわかるが、「父親が死んだ時に持っていた懐中時計を今もなお持ち続けている自分」に浸っているようにも思う。そんな自分を神話化させたかったのかもしれない。儚く散るが。
・女性という存在について
大尉は女だからと甘くみていた女に反撃されるのだが、映画全体が女性に対してのなにか、投げかけを強くしている印象がある。という理由が、パンから渡された本に赤い色で描かれる卵巣だけではなく、迷宮に向かう門の上部が卵巣に見えるし、2つの木が真ん中で寄り添い、その先からは左右に別れている感じも、どことなく同じことを連想させる。女のことを甘くみているが大尉が求めている子どもを産む存在はどう頑張っても女であり、自分がほしいものは女に与えられるしかない。

なんで?って思うことは多かったけどいろいろ調べてみたら考察レビューがたくさん発掘できたのでおもしろかった。特にパン=義父説や、義父はほんとうはオフェリアを愛していた説。みんなようそんな解釈できるよな…… すごいわ。このあとパシフィックリムを観ようかしらと思うのだけど落差でどうにかなってしまいそう。